赤ちゃん教育

1938年のハワード・ホークス監督『赤ちゃん教育』を観る。主演はケーリー・グラントとキャサリン・ヘプバーン。

これを書くために、ウィキペディアで制作年を確認して初めて、30年代の映画ということを知ってびっくりした。1938年の映画にはとても思えない。

ケーリーは23歳、キャサリンは21歳のころの映画である。DVDの画質があまりに低く、ふたりの顔がよく見えなかったけれど、こんなに若かったとは。やはり、パンツスタイルだと現代的に見えるからかなぁ。
キャサリンの演技はとにかく見ごたえがあり、ケーリーはまだすこし青臭い。というか、わたしが見るケーリーはいっつもおんなじ演技におんなじ表情だ。でもそこがいいところでもあるのだろう。

キャサリンはやっぱりハリウッドナンバー1の女優なだけあるなぁ、ほんとうに。どうしてこんなにゴージャスで、貫禄があって、危うさがすこしもないんだろう。21歳に見えるかも知れないけれど、21歳とは思えない。
演技がうまいとか自然体というよりは、もはや完璧。模範解答であり、これっぽっちもそれが定型的なわけではない。
『赤ちゃん教育』といっても、人間の赤ちゃんが出てくるのではなく、出てくる赤ちゃんは豹の赤ちゃんである。
No Animals Were Harmedの文化はまだないのか、何もクレジットが出ずになんだかちょっと怖かった。痛いことをしてないといいんだけど。

すごいストーリーにすごい演技だったけれど、そもそもわたしはドタパタ劇があんまり好きじゃない。それに、大声も好きじゃない。この時代のハリウッド映画は、みんな少し声を張り上げすぎだ。テレビの音量を下げればいいじゃないか、と思われそうだが、そういう問題ではなく、きっちり腹から発声されている声が苦手なのだ。
キャサリン・ヘプバーンは、まったく見事な腹式発声をしていて、わたしはだからテレビ越しにすこし物怖じしてしまう。
声の大きい人とは仲良くなれない、と子どものころから断定している。(ばかみたいですみません)

ただの好き嫌いの羅列になってきたが、ケーリー・グラントもちょっと苦手なので、この映画をあんまり愉しめなかったというのが結論である。
でもキャサリン・ヘプバーンは美しかった。あまり彼女の出演作を観ていないが、ここまで美しい彼女には初めてお目にかかった。それに、なんてパンツルックが似合うことか。心配になるくらい細い腰!

豹ありきのストーリーであり、コメディだから別にいいのだが、内容の薄い映画ではあるけれど、完成度の高いドタバタ劇は観られる映画。
ずっと気になっていたが、登場人物たちは最初から最後までほんとうによくしゃべっていたのに、表示される日本語字幕はあきらかにその半分以下だった。ポツポツとしか訳してくれないのだ。英語くらい聞き取りたいところだが、邦画でも字幕が必要な人間なので、これには弱った。ちゃんと全部の台詞を把握できたらもう少しおもしろかったかな。
名作を復刻されているDVD制作会社にはもう少しがんばってもらわないと・・。

我ながら内容の薄い映画感想。(ずいぶん前に観たし!)